今日、幾つかの生命を終わりにさせた。
今日も、と言った方がもしかしたら正しいのかもしれない。
妻に呼ばれて部屋に入りカーテンに近づくと、白い彼女が卵を産んでいた。
僕らが決めた領土に足を踏み入れた彼女が悪いのか?
ちり紙で彼女を包み込み、充分な力を込めて彼女の命を絶つことが自分の役務だと思った。
僕の手を止めて妻は言う。
彼女を外へと飛び立たせてあげよう。
窓を開け、そしてカーテンに手をかけ、そろりそろりと揺らす。
彼女の持つ全てを伝えるために力尽きたのか、彼女は必死に布に掴っていたのか。
どちらであったのか、どちらでもないのかは分からないが、彼女の身体は微動だにせず、上へ、そして下へとカーテンの波動の上をゆらりと流れていく。
やがて、宙を舞いバルコニーの床に落ちた。
死に体に見える彼女にクリアファイルを差し出す。
足を滑らせながらシートの上に載る彼女を壁の上へと降ろす。
彼女は、圧力のない風に吹き飛ばされるように、力なく木の枝へと落ちていった。
カーテンについた卵を、空いている窓の外に出て、叩いてあげればよいものを、始めの義務を思い出したようにちり紙でその粒を擦り落としてゴミ箱に捨てた。