テロリスト批難の決意

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■テロ非難決議の全会一致採択

衆議院で、テロ非難決議が全会一致で採択された。

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◆産経ニュース 衆院の非難決議全文

http://www.sankei.com/politics/news/150205/plt1502050019-n1.html

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また、衆議院に続き、参議院で同様の決議が、全会一致で採択された。

参議院では、決議内容の修正を求める山本太郎参議院議員が、採決を棄権したことが報道されている。
インターネットで、その棄権に関する情報を検索すると、退席した山本議員への賛同者はいるものの、多くの人が同氏の行動に対して異を唱えているようである。
山本氏は自らのブログで途中退席した理由と、修正案として提案した3点を説明している。

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◆山本太郎氏ブログ

http://ameblo.jp/yamamototaro1124/

◆修正案(上記ブログより抜粋)

①今回の事件の検証。イラク戦争の総括を含む。
②特定の国名の明記を避けた関係各国への謝辞。
③英訳文を同時に用意する事

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私は、山本氏の政治的思想を知らない。

但し、同氏のこのブログ記事を読むと非常に論理的であり、かつ自分の役務や責任を理解した上で、決議の修正を促そうとしていることを読み取ることができる。

一方、国会議員や多くのマスコミは、同氏の主張に対して、批難するか、無視を決め込む様相である。
決議の採択により、『テロに屈しない』という正義感に満ちた言葉に基づく総意の決意を示すことができた、というセンチメンタリズムに溺れているのであろうか。

本事件は、テロリズム、という言葉を使っている時点で、刑事事件とは全く異なる事象である。つまり、当決議は完全に政治的なものであり、今後の日本のアラブ地域への政策方針を宣言するものとなるはずである。
当然、ここで示す政治的方針は、今回の事件が発生した原因や、事件の発生した地域に対するこれまでの日本の政策実績評価を踏まえた上での決意を示すものでなければならない。

もし、この決議が、『日本国は、米国主導の有志連合に積極的に関わり世界の安定に向け貢献していく』、という決意の表明であれば、決議文の内容は理解し易い。

但し、『日本は、軍事を伴う有志連合からは一歩離れて、人道支援に徹することにより地域の安定に貢献する』、という決意の表明であれば、ヨルダンの国名を安易に掲げるのは危険である。

今回の事件で、表面上報道で一般に公開された情報だけを考えても、このような文章から、日本の国会議員が今回の事態を全く検証していないことが分かる。
端的に言えば、『テロを許さない姿勢』と『人道支援』を駆使した訴えと、『海外の在留邦人の安全確保』がかみ合わなかった今回の結果から目を背けている訳である。

また、『英文訳が必要だ』、というのを完全に黙殺していることからも、この決議はあくまで日本の内向きに対する決意であり思想統制的な意味合いが強いことが分かる。

少しでも翻訳をしたことがある人であれば、知っていることであろうが、文書を正確に翻訳することは、基本的には不可能と思った方がよい。
主語や目的語が文章中では不明確であったり、省略されていたり、また、翻訳先の言語には存在しない概念の単語があったりする、ということはよくあると思う。
このため、翻訳文は、訳者の理解(それに伴い必然的に思想を含むことも有り得る)で文章の補完しながら作成していく必要がある。

今回の日本政府のイスラム国への主張を正当とするのであれば、今まで日本は人道面での活動しかしていないわけであり、イスラム国は悪意を持って安倍首相の発言を誤解した訳である。

自分の用いた言葉を、再び他者に上手く利用されることがないようにするための措置を取ることが政治的配慮である。

同じ言語内でも、推敲した原稿を準備して発言を行う理由の一つに、誤解されることを防ぐ、ということがあるであろう。
他言語圏の人が、誤解することは簡単である。

このように、この決議から分かることは、日本の国会議員には、今回の事件を教訓にして、原因やその対策を考えようというつもりは毛頭ない、ということである。
殆ど日本の政治家が、テロという言葉を利用することにより、日本世論を制御していく行動に徹しているのであろう。

政治家は論理的に話すことが難しい職種であるのかもしれない。

但し、山本太郎氏のような論理的な正論を排除するだけでは、何も解決することはできないと思う。

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